年が明けたと思ったらあっという間に1月も下旬。おめでとう、と言うのがはばかられるタイミングになってしまいましたが、今年もよろしくお願いします。
年末・年始、長野県では穏やかな天気が続きました。山に入った人たちは良かったと思っていたら、11日の地元新聞には、「過去10年で最多の遭難者数」という見出しが出ました。なぜなのでしょうか。
このことは次回書くことにして、今回は暮れにいただいた一冊の本を紹介します。 本のタイトルは、「登山の運動生理学とトレーニング学」で、著者は鹿屋体育大学の山本正嘉先生。山岳センターが作った「山のグレーディング」は先生の研究成果を使わせていただいています。美ヶ原で行っている「登山体力セルフチェック」は先生の提唱されている方法を実践しているものです。
先生が2000年に書いた、「登山の運動生理学百科」は登山の運動生理学のバイブルとして有名で読んだ方も多いと思いますが、本書はその後の研究成果を付け加え、トレーニングや高所登山の内容は大幅に拡充されています。また登山の発展形であるトレイルランニングや、トランスジャパンアルプスレース、国内外で行われた究極のアルパインクライミングなどのデータを元に、人体の可能性と限界も論じられています。
(左が2000年版、右が今回の新版)
「学」という字が2つも入ったいかめしいタイトルと、700ページに及ぶ厚さに圧倒されてしまいそうですが、写真とグラフでわかりやすく説明されています。
そしてご自身が優秀なアルパインクライマーであった先生の体験や、一流登山者との交流体験、登山の歴史など幅広い話題を扱った100個以上のコラムがあって読み物としても面白い構成になっています。
かつては登山といえばアルパインクライミングのことだったのですが、現代は幅広い年代の人たちが、幅広い目的意識で、様々なアクティビティーを山というフィールドで繰り広げています。その中で共通するのは垂直方向に移動する、「登る・下る」という行動です。
「登る・下る」の好きな人はこの本を読んでその体力的な意味・影響や年齢による変化などを理解し、自分の目的やアクティビティーに合わせてトレーニングをする方法を身につければ、一生を通して山ともっと安全に楽しく関わることができるでしょう。