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所長のひと言(31)「30代男性 遭難注意」

権限を行使して、シルバーウイークからの2週間で9日の個人休日を仕込んだのですが、晴れたのは2日だけ。10月に入ってもまだぐずついた天気が続いています。

タイトルの「30代男性 遭難注意」は、10月3日の信濃毎日新聞に載った記事の見出しです。この数年、長野県の遭難事故で一番多いのは60代の男性で、30代男性はその3~4割なのですが、今年はほぼ同じ数の人が遭難事故をおこしている、というのが記事の主旨です。

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(どちらもクリックで拡大)

 長野県警ホームページに遭難統計が載っているので調べてみると、グラフのようになります。

 

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(クリックで拡大)

 102日までの集計で一番多いのは60代の男性で39人、次が70代、50代と並んで30代の男性で32人。 実はこの統計はキノコ取り遭難を含んでいます。キノコのシーズンになって、高齢者の遭難が多発していることを考慮するとやはり30代男性の数は突出しているようです。これまで山岳センターが登山者や遭難者のアンケート調査で掴んでいるデータから、今年のデータを読み解いてみます。

 男女共に60代にピーク、男性は30代にもピークがあります。2つのピークがあるのは2つの集団が重なっているからです。

 60代を中心とする集団は、百名山をめざした登山ブームに属する人たちです。中高年登山者と呼ばれていた人たちの中心は今や60代。

 男性30代を中心とするのは、10年くらい前から“山ガール”というキーワードで呼ばれている今の登山ブームに属する人たちです。男女比は2:1。

 私と同年代の百名山登山ブームの人たちは、登山経験は長いが体力の衰えを自覚してない傾向があって、そのために事故を起こしてしまいます。山岳センターではこのような人のために「マイペース登高能力テスト」をして自分の体力にあった山に登るよう呼びかけています。

 今の登山ブームに属する比較的若い人たちには、単独行が多い、計画書を作る割合が低い、雨具やヘッドランプ、非常食を持っている割合が低いなど山や登山の持つリスクを過小評価していると思わせる傾向があります。

 その理由は、実社会で自然のリスクを感じる場面が少なくなっていること、この世代の情報源であるネット世界にも登山の成功体験があふれ、登山の持つリスクを想像しにくいことがあると私は考えています。

 登山はリスクを克服して楽しむものです。

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