今年のゴールデンウイークは、日の並びが絶妙で、最大で10日も休みがつながった人もいたかもしれません。しかし長野県内では、北アルプスで遭難事故が相次ぎました。新聞報道によると、事故は4月30日から5月2日の間に13件起き、19人が遭難。うち5人が亡くなりました。そのうち9件が穂高岳周辺に集中しています。
この連休、天気はめまぐるしく変わりました。連休前の4月28日、本州南岸を低気圧が通過し広く雨。 連休が始まった29日は冬型で寒気も入って3,000mの稜線は雪が降りました。30日は冬型が緩んで午前中は回復したのですが、午後から気圧の谷の通過で天気は下り坂となり夜半には雨が降りました。山岳センターはこの時、針ノ木谷で講習を行っていましたが、夜になって激しい雨。朝方には雷も鳴って、5月1日は針ノ木峠に向けて登る予定を変更して撤収しました。この日晴れ間は出たのですが、強い風が吹き荒れました。2日は本州南の高気圧に覆われ穏やかに晴れました。3日は日本海を西から接近する低気圧の風と、高気圧の縁をまわる風が強め合って、南風が次第に強まり気温も上がりました。3日夜から4日午前中に寒冷前線が通過し、山は広く暴風雨に見舞われました。強い風は5日まで続きましたが、6日は風も収まり比較的穏やかな日となりましたが、7日は西から低気圧と停滞前線が接近して雲の多い一日、8日は穏やかな一日。
この時期は冬と夏の天気が切り替わる時で、目まぐるしく天気が変わります。強風、気温の上下、雪・雨・雷、ガス、そしてグサグサからツルツルまで変わる雪面。今年の場合残雪期の山で多くの人がイメージする、青空に白い山が輝き、鯉のぼりが泳ぐ日は、2日と6日、8日しかありませんでした。しかしこれがこの時期の山の姿です。事故が多発したということは、このような変化に対応出来ない登山者がいたということです。一度過酷な状況に陥ると、抜け出すのは大変です。そうなる前に、現在の状況を認識し先を予測し、自分たちの体力、技術、知識、装備で対応出来るのか考えることが大切です。不安を感じるようなら、不安を解消する方向に対応をとらないと最悪の結果を招くかもしれません。
「登山は体力が大切だ」と山岳センターでも言っていますが、実はそれ以上に頭も使うのです。
(土砂降りの中ツェルトをかぶる:5/1リーダーコース講習にて)