気温が上がったり下がったり。今週はまとまった雪が降りましたが山の雪の量は例年よりかなり少なめです。週末の講習で雪洞が掘れるかどうか微妙です。
先月28日、「カクネ里雪渓は氷河らしい」と発表がありました。カクネ里は平家の落武者が住んだという伝説の地で、鹿島槍ケ岳の登山口大谷原から大川沢を遡り鹿島槍ケ岳北壁の下に拡がる谷です。
ここに大きな雪渓があります。登山道はないので大川沢を遡上するか、遠見尾根から下降するかしないと雪渓に立つことはできませんが、遠見尾根の小遠見山や大遠見あたりからのぞみ見ることが出来ます。
昨年秋に、調査団が現地に入り氷にポールを立て、その動きをGPSで精密に測定した結果氷体の流動が確認されました。正式にはこの結果を論文にまとめ、学会で認められた後ということですが、認められると、剱岳・三ノ窓雪渓、小窓雪渓、立山の御前谷雪渓に次いで4番目の氷河ということになります。
氷河というとアルプスやヒマラヤの何キロも長いものを思い浮かべると思いますが、雪が厚く積もって押しつぶされた氷体があること、それが自重で動いていることという2つの条件が整えば氷河です。
カクネ里雪渓は長さ700m、幅最大400m、厚さ40mの氷体があって9月24日~10月18日までの間に17センチ動いたことが確認できました。単純に1年に換算すると2.5mほどになります。ヒマラヤやパタゴニアの氷河に比べると少し遅いようです。氷河は、極に近いところや標高の高い寒冷な場所に降った雪が何百年も何千年も融けないで積み重なって発達するのですが、北緯35度、標高2,000m程のそれほど寒冷でないところに氷河があるのは、北アルプスが世界でも有数の多雪地帯だということが関係しています。冬の間日本海が供給する大量の水蒸気が北西季節風に運ばれ大量の雪となって北アルプスに降り積もります。この雪は夏の間にほとんど融けてしまうのですが、大量に降り積もった場所では、融けずに残った雪が積み重なりやがて氷となって堆積します。大量の雪が降り積もるのは、風上となる稜線の西側ではなく吹き溜まる稜線の東側です。カクネ里雪渓も、これまで認定された3つの氷河もすべて稜線の東側にあります。
山はまだまだ知らないことだらけ。認定されたら見学ツアーをやりたいと思っています。