杉田がつづる「ビスタリ山ある記」の『チベット』シリーズ。
今回の「チベット③」が完結編です!
最後の【チベット写真館】もお楽しみください。
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こんなことで、偵察は予期せぬ結末となった。最終日、ラサから北京に飛ぶ飛行機に乗り遅れ、帰りのチケットを買い直すというおまけまで付いた。泣きっ面に蜂とはこのこと。
チベットには6,000m峰は山ほどあって個々の山の事情は承知していなかった、申し訳ないというチベット登山協会の話には、少し温度差を感じてしまうが、それでも初めて見たチベットの山はとても魅力的だった。
魅力の一つ目は未踏峰が多いこと。国境を構成している8,000m峰が連なるヒマラヤ主脈に未踏峰はなくなったが、ヤルツァンポーの北側に拡がるチベット高原には未踏の6,000m峰がそれこそ山ほどある。
チベット高原の主な山脈は3つ。西から夏康堅が属するガンディセ山脈、ラサから近いニンチェンタンラ山脈、ヤルツァンポーが南に向きを変える辺りの横断山脈である。魅力の2つめは、交通網が発達していること。夏康堅はラサから1,000kmの距離にあるが、全行程車が使えたので2日半で登山口まで行くことができた。
今回の偵察では、ニンチェンタンラ山脈の麓にあるヤンパーチンという町にも行ってみたが、ラサから車で4時間ほどだった。登山口まで何日もキャラバンをしないとたどり着けないネパールとは大違い。それこそBCに車横付けということも可能だ。
そして何より心を引きつけるのは、青い空と白い山と草しか生えない荒涼とした大地、そこに家畜とともにチベットの人たちが営々と作りあげてきた暮らしの暖かさと懐かしさ。また行ってみたいと思う。
偵察から2ヶ月たった。色々な議論を経て、来年春に予定していたチベット遠征は新しく目標の山を選定して行うことが決まった。これから目標の山を選定し隊員を決めてトレーニングや遠征の準備をしなくてはいけない。ポイントは目標の選定である。
チベットの地図を広げ、チベット登山協会と情報交換をしながら絞り込んでゆく。気の遠くなりそうな作業だが、これを乗り越えてこそ誰のものでもない自分の登山となると信じてビスタリビスタリやってみるか。(「チベット」完)
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(おまけ)【チベット写真館】
( ↑ TMA登山学校)
( ↑ ニンチェンタンラ山脈の未踏峰)
( ↑ 採ったばかりの冬虫夏草)
( ↑ ラサのホテルロビー)
( ↑ ラサの造花屋)
( ↑ ラサの裏通り)
( ↑ ラサの裏通り・肉屋/ヤクの肉)
( ↑ ラサの裏通り・豆腐屋、卵も)
( ↑ ラサの裏通り・八百屋)
( ↑ ラサの裏通り・野菜屋台)
( ↑ ラサの裏通り・仏具屋)
( ↑ ラサの「カイラス」ブランド 登山道具店)
( ↑ ラサのホテルディナー・宮廷料理)