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「五竜遠見尾根」(「ビスタリ山ある記」(15))

5月連休が終わりました。季節が早めに進んでいる安曇野では、田植えが終わった田んぼに残雪の山が映ってきれいです。

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今年の連休は、前半は好天に恵まれましたが、後半は寒気が入って北アルプスでは数十センチの積雪があり真冬に戻ったような天気でした。皆さんはどこかに登りましたか。
私は連休の前半、4月29日から1泊で、山岳会のメンバー3人で五竜遠見尾根に行きました。
このルートは、2013年の4月に一度計画したのですが天気が悪く、遠見尾根から主稜線に出たところまでしか行けなくて宿題になっていました。
無雪期の五竜遠見尾根は人気のルートですが、私はあまり好きではありません。とにかく長い、暑い、景色が見えない。

一方、雪のあるこの季節は快適。左に豪快な鹿島槍ヶ岳北壁、下にはカクネ里氷河、右は八方尾根の向こうに白馬三山。広葉樹が葉を落として景色は最高。長い苦行の尾根は絶景の尾根に変わります。

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しかし誰でもこの景色を楽しめるということではありません。ルートが長くゴンドラの営業時間にも規制されるので、日帰りは厳しい。小屋は営業していないので雪山テント泊の装備が必要。この時期の雪は、朝晩には堅く日中はザクザクとなります。遠見尾根から後立山連峰の主稜線に出たあとは雪と岩のミックス。頂上直下は急な雪壁となり、雪の付き方に依ってはロープを使うかもしれない・・・。などなど考えると装備は3人合わせて約60kg程。標高差は1,400m、往復15km。体力と確実なアイゼン・ピッケルの技術が必要なルートです。
登山口の五竜スキー場は、上部のゲレンデだけがまだ営業していて沢山の人が春スキーを楽しんでいました。登山者もちらほら。小遠見山までは急な登り。

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その先はアップダウンを繰り返しながら狭い尾根を辿ります。遠見尾根の雪庇は北側に出ます。今年は雪がだいぶ解けて不安定です。雪の上は歩きやすいのですが崩落の危険と隣り合わせ。尾根が狭い中遠見の前後は特に注意が必要です。
大遠見まで行くと尾根は広くなり、テントを張るパーティーが出てきます。私たちはもう少し頑張って西遠見の少し手前で幕営。天気は最高。鹿島北壁と五竜東面の壁を前に、テントの外で宴会となったのは自然の流れです。

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ホタルイカの醤油漬けサイコー。
翌日も良い天気。雪は打って変わって堅くなりアイゼンの爪が小気味よく突き刺さります。雪が堅いうちに登ろうと5時出発。

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白岳のカールは雪が安定しているので中をトラバースして小屋の前にでました。2013年に来た時は、雪が深かったので夏道通りに白岳を直登しました。小屋の東のテント場にテントが10張りほど。後立山の主稜線は風の影響で西側の雪は少なく、雪庇は東側にでます。
アイゼンを付けたまま夏道を進みますが、やがて氷と岩のミックス。

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アイゼンを引っかけないよう慎重にも慎重に。頂上手前のクサリが付いている岩場は雪に埋もれていますが、かなりの傾斜で緊張、慎重に登ります。

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そして頂上。

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南に槍穂、西に剱。
写真を撮ってすぐに下山。下山が一番危険です。この傾斜とこの雪でミスをしたら滑落停止技術など何の役にも立たず、即アウト。

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ピッケルを刺してバランスを取りながら、一歩ずつ足場を確かめながらおります。

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不安を感じたら後ろ向き。無事に小屋に到着。
頂上から下りてくる時、登ってゆく人の中に、アイゼンは持っているけど、ピッケルを持っていない人が2人いました。いずれも単独の登山者。このときの雪とトレース、天気などの条件では、ピッケルはなくても登れるかもしれません。この日五竜で事故が起きたという話しを聞かないので、無事に下山したのでしょうが、いかがなものかと思います。
小屋から頂上までの間は危険地帯。事故が起きたら起こした人も、助ける人も危険にさらされます。しっかりと安全を確保した登山をしたいものです。
好天に助けられて、5年がかりの宿題を片付けることができました。

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