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「±2,000m仮説」(「ビスタリ山ある記」(6))

気がつけば9月も半ば。安曇野では稲刈りが始まり、乳白色の蕎麦の花が咲きはじめました。今年の8月は記録的に不安定な天気で毎日曇りの日が続いたおかげで私の夏山ハイシーズンは、山に行ったのは夏山入門コースの講習で槍ヶ岳に行った3日だけという残念な結果に終わってしまいました。

話は変わりますが、山のグレーディングや美ヶ原体力チェックなどでお世話になっている鹿屋体育大学の山本正嘉先生から興味深い話を聞いたので紹介します。

佐賀県の金立山(きんりゅうさん)という山に毎週登っている金立水曜登山会の話です。150人ほどの会員がいて平均年齢は69歳。

この人たちは山に登った時、膝が痛くなる、下りで脚ががくがくになる、登りで心臓や肺が苦しい、筋肉痛になるなど、山登り特有の定番トラブル発生率が、一般の中高年と比べて格段に低いというのです。山に関わる仕事をしている訳ではなく、50台の後半になって山登りを始めたり、再開したりした人が大半です。

先生が調査したデータをみると、この人たちの特徴は、

① 山に登っている回数がとにかく多い。毎週の金立山登山を含め、一ヶ月に4回以上登っている人が7割。年間の登山日数は、男女ともに40~50日が最多で100日以上の人も2割程います。

② コースタイムの1.5倍くらいのゆっくりしたペースで登る。 このような登山を行っている人たちに、登山特有のトラブルが起きにくいばかりか、生活習慣や老化によっておきる高脂血症や骨粗鬆症などの病気の割合も著しく低いのだそうです。

金立山の標高は501.8m。これを毎週登ると1ヶ月におよそ2,000m登って、2,000m下ることになります。このことから山本先生は、安全・快適・健康的な登山をするためには、1ヶ月に2,000m程度の登りと下りをトレーニングとして行うことが必要条件ではないかとおっしゃって「±2,000m仮説」を提唱されています。 現役世代の人たちからは、それは時間の有り余っている老人の話で、毎週山に行くことはできないという声が聞こえてくる気がします。それはそうでしょう。

では月に2回、±1,000mずつはどうでしょう。私が20台の頃、医者でもある山岳会の大先輩に「月に2会山に行けばトレーニングは必要ない」と言われました。2回が難しいなら1回で、足りない分は階段の上り下りで補うという方法もあります。

家の近くの山、駅や高層ビルの階段など、登り下りのある場所をみつけて小分けでも組み合わせでも、とにかく1ヶ月で2,000mになるように心がける。ゆっくり登るということも下りだけゆっくりという方法もあります。登りより下りの方が膝に大きな力がかかります。膝が痛くなったり筋肉痛になったりするのは下りの時です。これは小股で時間をかけて休み休みゆっくり下れば防ぐことができます。

9月になって天気もよくなりそうです。8月行けなかった分を取り返さなければ。

20170913仮説写真

(秋晴れの登山道)

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