春めいて冬も終わりと思っていたら、栃木県で大きな雪崩事故がありました。
前途ある高校生の死に、言葉はありません。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
前回、無雪期の山に登るのは体力の要素が大きいが、積雪期の山に登るには体力だけでなく技術と経験が必要だということを書きました。今回は、効率よく技術や経験を身に付ける方法を考えてみたいと思います。
結論からいうと、山に登るための技術や経験を身に付けるにはたくさん山に登るしか方法はありません。しかも、それを効率良くやろうとすれば誰かから習うということが必要です。このことを、道のある山、つまり無雪期の一般登山道の登山と、道の無い山、つまりバリエーションルートや残雪期・冬期の登山にわけて考えてみましょう。
道のある山に登るのであれば、独学で身に付けることは可能です。それは、登高能力テストをして山のグレーディングに照らして自分の力量にあった山を選択し、少しずつ難易度の高い山にステップアップするという方法です。一緒に登る人は自分よりレベルの高い経験者が望ましいですが、いなければ自分と同じ程度の人ならかまいません。単独や自分よりレベルの低い人は避けた方がいいでしょう。登山雑誌やネット、ガイドブックなどから、出来るだけ偏りのない情報を仕入れて参考にしましょう。この方法で次第に登る山の難易度を高めていくと、どこかで不安を感じたりヒヤリハット体験をしたりするかもしれません。そうなれば、独学は諦めて誰かに教えてもらうのが無難です。「誰か」とは、経験者、講習会、ガイドなど自分よりレベルの高いひとです。
道の無い山に登るには独学では無理で、誰かに教えてもらうしか方法はありません。しかし講習会やガイドといった有料講習で扱えるレベルには限界があります。「限界」とは講習会主催者やガイドからみると難易度の高い講習では事故のリスクが高くなりすぎること、参加する側からみれば、難しいところは費用が高くなって負担しきれないという2つの面から生まれます。一概にはいえませんが私は日本の山では道の無い登山のうち残雪期登山あたりまでと考えています。
もっと難しい登山をする技術や経験を身に付けるには、山岳会などに入って経験者に教えてもらうか、自分と同じ位のレベルの仲間と一緒に登って経験を積むという方法しかありません。登山以外の多くのアマチュアスポーツはこのような関係で成り立っています。かつては日本中に山岳会があってそれぞれ個性をもって運営されていましたが、仕事以外の組織に所属することを好まない社会の風潮のなかで、今では山岳会は絶滅危惧種のような存在になっています。しかし登山の安全確保やレベルアップのためには理想的でした。今の時代だからこそ、山岳会の良さが見直されてもいいと思います。
今月末で所長を交代し4月からはアドバイザーということになりました。従って私こと杉田が書く「所長の一言」はこれが最終回。文章を書くのに時間がかかって月1回のペースは少し負担でしたが、自分の考えを整理することができたのは良かったです。
少し休みをもらってまた別の形で再開したいと思っています。ありがとうございました。
(3月29日 佐渡山にて)