登山後、今回の研修の締めくくりとして、シャモニの街と周辺をめぐりました。以下は、帰国までの数日間です。
ツェルマットからシャモニに戻った翌日の8月15日、教会でガイド祭りの式典が行われました。お揃いのジャケットを着て、男はニッカーズボン、女性は同じツイード生地のスカートをはいていました。年配のガイドも大勢参加し、若いガイドは紹介された後、胸に先輩からバッジをつけてもらっていました。幼い子どもを連れた夫婦らしいガイドも参加していました。妻に夫がバッジをつける時、そばで両親も祝福していました。最後に全員でラ・マルセイエーズを斉唱しました。皆胸を張り、シャモニのガイドであることの誇りを全身で表していました。
モンブランと谷をはさんで反対側のブレヴァンにテレキャビンとロープウェイで登りました。
上の写真は中間駅。
ブレヴァンからはモンブラン全体が良く見え、ミディとの位置関係がよくわかります。
ブレヴァン周辺では朝からパラグライダーがよく飛んでいます。
シャモニ駅の横から出ている登山鉄道に乗り、メール・デュ・グラス氷河の見学に出かけました。終点のモンタンヴェール駅からロープウェイで下り、氷河に降り立ちました。氷河には横穴が掘られており、中を歩くことができます。毎年少しずつ流れ下り、不安定に見える氷河ですが、洞窟の中で触れた氷はかたく、神秘的な色をしていました。
もう一度近くからモンブランを見たいと思い、再びミディにロープウェイで上がりました。朝から活動していたクライマーたちが、終了点である山頂駅に次々に登って来ていました。
ミディからの帰りは、中間駅からシャモニまで歩いてみました。手頃なハイキングコースです。背後にある岸壁と、高山植物の咲くゆるやかな斜面が対照的です。途中でマーモットの巣穴らしいものと、その姿を見ました。(右写真の真ん中にいます)
ミディ中間駅からのハイキングの途中で、上から来たトレイル・ランニングの人に追い抜かれました。気持ちよく挨拶され、こちらを気遣いながら追い抜いて行きました。しばらくすると、同じ人が駆け上がってきました。シャモニの教会付近にUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)のアーチが作られていたので、大会に出場する選手だったのかもしれません。
ちなみに、帰国後この大会の一環として8月末に行われたCCC(UTMBの後半101kmを走る山岳レース)で、大町市出身の上田瑠偉選手が2位に入ったことを知りました。おめでとう!
アルパイン博物館に行きました(写真の建物の1・2階)。係の方に「写真撮影はOK」と言われたので少し撮りました。望遠鏡や様々な計測をする機器が置いてあり、初期の高山登山は学術的な意味合いが強かったことがわかります。
ピッケルの原型らしい、氷に手がかりや足場を刻んだ斧もありました。傘も重要な装備だったのか、革で作った立派なケースに収められていました。
一番感動したのは、ガストン・レビュファが使用したと思われるように置かれた登山用具です。本人のものかどうかよく確認できませんでしたが、しばらくその場に釘づけになりました。
シャモニは第1回冬季オリンピック大会が開かれたところです。多種類のスポーツ用具の中にカーリングのストーンもありました。
フレジェールのロープウェイとリフトでアンデックスに登りました。ドリュが大きく見え、迫力があります。
谷間の奥にはグランドジョラスも遠望できました。
リフト終点の上には岸壁が連なり、乾いた快適そうな岩を攀じているパーティーがいくつも見えました。
シャモニの街中には、ヨーロッパ各地から車やバイクで人々が集まっているようでした。バイクは大型のエンデューロが多く、2人乗りも普通です。長距離用に調整されたBMWのGSとドカティのムルティストラーダに、ついシャッターを切りました。シャモニでは横断歩道の横に立っていると、合図をしないでも車は必ず停車してくれました。日本での自分の運転を振り返り、反省しました。
シャモニの店
シャモニの特産物にトムチーズやサラミがあります。店内に様々な肉の加工品やチーズが並んでいます。
観光客に人気のあるモンブランチョコレートを販売している店では、ケーキなども扱っています。朝から店の前のカフェで、ケーキとコーヒーを楽しむ人の姿をよく見ました。
シャモニにはイタリア系の店もありました。イタリアンレストランのボリュームあるピザ。
街中には、登山用品がよく揃っているスネルスポーツや有名ブランドの専門店、いつもバーゲンセールをやっているような格安の登山とスキーの用具店などがあります。最新の用具や周辺の山や岩壁の案内書やトポを扱っている店もあり、あちこち見て回りました。
今回のシャモニ滞在と登山の目的の1つは、シャモニのガイドと接することでした。言葉の問題もあり、深い交流という訳ではありませんでしたが、彼らのガイド手法の一端を知ることができました。言葉の点では、フランス語ができない私が一番救われたのは「ボンジュール」と「メルシー」です。山だけでなく、店やホテルでもよく使いましたが、挨拶とお礼の言葉の大切さを強く感じました。
シャモニや登山では、近藤等さんの著書や訳書の世界を感じることができました。今回出会い、またお世話になった方々に深く感謝いたします。ありがとうございました。この山行で得たものを今後の自分の登山や、センターの講座の企画・運営にも生かしていきたいと思います。