昨日は、長野県のとある「総合センター」へ、山岳総合センター職員が潜入?!
その名も「長野県工業技術総合センター」です。
主に、県内の製造業発展に寄与するため、技術相談や、試験機の利用対応など
行っているところです。
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今回の訪問の主な目的は、センターが登山の講習会などで利用すべく、
主にクライミングロープやギアの強度などに関する資料を作成するためです。
とはいえ、一般的な強度試験などは、既にメーカー側で尽くされているので、
そこは、センターが改めて・・・というものではありません。
しかし、その使用法や使用条件によっては、破断の様子や破断時の強度などが
全く異なることが考えられます。
今回、実際の利用時に想定されるような、「何かしらの要素が加わった場合」の
試験データをとってみて、それを安全登山の啓発に活用したいと考えています。
とはいえ、センターの力だけでは到底できないことですので、専門家のご意見、
機器や方法の模索など、こちらの工業技術総合センターさんのご協力を得ながら、
まずは、その可能性について確認するため訪問したところです。
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たくさんの部屋があるのですが、今回訪れた場所はこちら・・・
「材料強度試験室」
ナニヤラ難しそうな部屋の名前です。
中に入ってみると・・・
いろんな機械やコンピュータがずらり。
こちらは、引張強度の試験機。
静荷重による材料の伸びや破断の様子について、その強度データや
ハイスピードカメラと併せると破断時の様子を撮影することが出来ます。
こちらは、破断の瞬間をカメラで撮影したもの。
ダブルフィッシャーマンで連結したロープスリングを、
冶具部分で切れないよう細工して、両端から引張ったもの。
想定する場面としては、ダブルロープでの懸垂下降など。
(ノット部分ではなく、結んでいない側で破断している)
こちらは、その破断試験の様子をサーモグラフィーで撮影したもの。
ロープが伸びるにつれて若干ですが温度が上がるということを
教えてくださり、合わせて撮影を行いました。
破断に影響するほどは温度は上がっていないのですが、
引っ張る前に比べると12~3度ほど上昇。
特に、破断直前の温度上昇が急激でした。
・・・休憩時にこんなこともやってみました。
所長を撮影~。
サーモグラフィーだとタモリさんみたいになってます(笑)
次に、ロープの真ん中にオーバーハンドノット(末端処理なし)を作り、
(輪状にせずに)両端を固定して引っ張った場合。
ノットがどんどんとスライドしていき、結果的にはノット部分の
直前で破断。(想定通り?)
その後も、いくつか実験の試験を行い、可能性を探りました。
機械的な制約もあるので、すべての条件を揃えて、ということは難しいですが、
一定の条件下でいくつかの実験を行うことは可能とわかりました。
技術センターさんの方では、顕微鏡による破断面の確認なども出来るとのこと、
我々にはちょっと専門的過ぎて理解できるか?!ですが、非常に分かりやすく
説明してくださるので、出来ることを色々試せたらと思います。
これから、具体的な試験内容などを考えていきたいと思っています。
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ロープの破断というと、「氷壁」で有名な「ナイロンザイル事件」が
頭に浮かぶ方もいるかもしれません。
こちらは、事故から60年近くたった平成26年に、
独立行政法人製品評価技術基盤機構の方による科学的調査の報告書が
作成されていますので、興味のある方は是非ご覧ください。
この事故の20年後、国内で登山用ロープの安全基準が作られました。
ちなみに、当時の切れた本物のナイロンザイルは、お隣・山岳博物館に
展示がありますよ!是非立ち寄ってみてください。