10月も下旬になって、紅葉が次第に里山に下りてきました。台風が行って雲が取れた後立山の山々は白くなっていました。もうすぐ雪の季節。
今年3月に栃木県那須岳で高校山岳部の講習中に起きた雪崩事故の検証委員会が報告書を公表したと新聞に載っていました。栃木県那須町のスキー場で栃木県高体連が行った高校山岳部員対象の登山講習中に雪崩が発生し、7人の高校生と1人の先生が亡くなり、40人がケガをするという衝撃的な事故でした。検証委員会は、講習を主催した栃木県高体連登山専門部のマネジメントと危機管理意識の不足が事故の原因と指摘し、県高体連や教育委員会に講習の対応見直しや、高校登山部活動のガイドライン作成などを提案、スポーツ庁や国立登山研修所に指導者育成へのサポートを依頼しています。
実はこの事故を受けて、長野県でも「高校生の冬山・春山登山における安全確保指針検討委員会」が立ち上げられていて、こちらは9月に報告書がまとめられています。長野県は、那須岳での事故直後に教育長が「山岳県として高校性の冬山登山を全面禁止することはない」と発言したことを受けて、最初から安全確保指針検討に絞って議論が進められ、登山計画書の事前審査や、顧問の研修充実などが提言されています。
今回の事故は、スポーツ庁から「原則として高校生以下の冬山登山は禁止する」という通達が出されている中で起きたもので、昨今の遭難事故増加に対する厳しい世論の中でどうなるかと気をもんでいました。しかしながら、栃木県・長野県ともに高校性の冬山登山を禁止するのではなく、ガイドラインを明確にして高校山岳部の冬山における活動を継続する方向になったので正直ほっとしています。
28年前、五竜岳遠見尾根でも雪崩で山岳部顧問の若い先生が亡くなった事故がありました。山岳総合センター主催の高校山岳部生徒と顧問向けの「冬の野外生活研修会」でした。長野県ではその後、開催時期、場所を変更して今でも続いています。しかしこの時の教訓は広く共有されてはいなかったということになります。2つの県で出された方向性は妥当だと思います。大切なのはそのことを関係者が共有し実行し、受け継いでいくことです。
新聞記事は、同時に半年経ってなお癒やされないご家族の思いも伝えていました。一度事故を起こすと、心の傷を癒すには無限の時間が掛かってしまいます。講習会で絶対に事故を起こしてはいけないことはもちろん、今後の山岳事故の防止に努めることが亡くなった人たちの無念の思いへの償いだと思います。
(写真:今年6月にセンターで行った高校生向け講習会の様子)
<青空の下、歩行練習>
<仲間たちと一緒に食事を作り、テントで寝るのも
かけがえのない経験となる>