長野県山岳総合センターは、安全登山の普及・啓発に関する各種事業を行っています

「低酸素トレーニングシステムを公開します」(「ビスタリ山ある記(27)」)

4月も終盤になりました。先週行った東京では、桜の花がわずかに残っている程度でしたが、大町では今が本番です。標高766m、山岳センター前の大町公園では、17日頃から咲き始め、昨日あたりから散りはじめました。先週末は晴天に恵まれて多くの人で賑わいました。早々と作られ、2度の雪に見舞われた屋台と寒そうにぶら下がっていた提灯も、やっとお客さんが来て生き返っています。

今日の話題は、低酸素トレーニングシステムです。昨年9月のチベット登山で、隊員が国内で高所順応を済ませておくために使った装置一式を、山岳センターにおいて公開することにしました。低酸素トレーニングのことは、昨年3月のこのブログで取り上げたことがありますが、もう一度整理してみます。

高い山に登ると頭が痛くなったり体がだるくなったりします。これを「高度障害」や「高山病」と呼びます。日本の山でも標高が2,000mを超えると症状が現れる人がでます。これは、体の中の酸素が少なくなって体が警報を出しているのです。警報を無視していると最悪の場合は命に関わることになります。個人差はありますが、誰でもなり得ます。ですから海外の高い山に登るときは、「高度障害」をいかに克服するかが登頂成功の鍵になります。

「高度障害」を起こさないように登るには、一気に標高を上げないで、何日もかけて少しずつ上げていく。1日に500m~800m程度が良いといわれています。そうすると人間の体は、次第に少ない酸素でも行動できるようになります。これが「順応」です。
これまで海外の山に登る時は、事前に富士山などの国内高峰に登って、「順応」しておくことが常識とされていました。高い山に登らなくても気圧を下げて、高い山と同じ環境をつくることのできる「低圧室」が大学の研究室に作られていましたが、施設が大がかりになり、部屋に出たり入ったりする度に気圧を上げたり下げたりすることが面倒です。私も20代の時、最初の海外登山では、信州大学医学部の低圧室で、6,000mくらいまでを体験したことがあります。

今回公開する装置は、気圧を下げるのではなく、空気中の酸素量だけを減らすことができます。気圧は周囲と同じなので、装置や施設の設置・維持が簡単です。
普通の空気には、約20%の酸素が含まれていますが、この装置は9.3%まで少なくすることができます。これは山岳センターの標高を加味すると体にとっては標高6,900mの高山にいるのと同じ環境です。昨年のチベット登山隊は、この装置を使って国内で順応訓練を行った結果、ほぼ全員が5,000mまで順応した状態で臨むことができました。

【昨年9月のチベット登山時。標高6,000m付近】
今回、公開するのは、低酸素空気発生装置と、軽い運動をするための踏み台とトレッドミルです(写真)。メモリ付きパルスオキシメータでトレーニング中の酸素飽和度(SpO2)と脈拍を記録しておくことができます。

【左・グレーの箱型の機器が低酸素発生装置】

この装置を使って出来ることは2つあります。
一つはこれまで書いてきたように、高峰登山をする時、あらかじめ国内で高所順応を獲得しておくことです。これによって、海外登山の期間を短縮できたり、登頂率が上がったり安全性が増したりすることが期待できます。
もう一つは、この装置を使って日常的に(例えば1週間に1~2回、1~2時間ずつ)トレーニングをしておけば、国内の山をより楽に安全に登ることが期待できます。ただしどの程度やればどの位の効果があるかはよくわかっていません。

利用料は、長野県山岳協会の協会員は、3時間あたり400円。協会員でない人は3時間あたり1,600円となります。使ってみたいと思う人は、山岳センターに問い合わせてください。
メール:info@sangakusogocenter.com


Updated: 2019年4月25日 — 11:17 AM

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