長野県山岳総合センターは、安全登山の普及・啓発に関する各種事業を行っています

所長のひと言(36)「雪山のリスクを考える その2」

  前回、天気の良かった年末年始の山で滑落を中心とした事故が多発したこと、初アイゼン単独で赤岳に挑戦した人がいたことを紹介しました。今回はこのようなことが起きている背景を探ってみたいと思います。
 どちらもアイゼン技術が未熟なだけだと言ってしまえばそれまでですが、未熟なままで雪の山に登ってしまう人が少なからずいるのは、無雪期の山と積雪期の山の違いが正しく理解されていないのではないかと私は思っています。
 無雪期の山は、乱暴に言えば体力さえあれば技術は無くてもなんとか登れるのですが、積雪期の山はそうはいかない。一番の違いは道があるか無いか。無雪期でも道の無いバリエーションルートが難しいという認識は多くの人が持っていると思いますが、積雪期は、道や標識・ハシゴ・鎖などの人工的補助がほとんど雪に隠れてしまうし、小屋も営業していないことが多いため、無雪期は易しい山でもいきないバリエーションルートになってしまうのです。
もう一つの違いは気象条件が格段に厳しいこと。冬は偏西風が強い上に標高が高いほど風は強いので、冬の稜線は低温と強い風にほぼ常時晒されています。
 このため積雪期の山の困難さを無雪期のグレーディングを基準にイメージすると、技術的にも体力的にもはるかに厳しいものとなります。残雪期は気温が上がる分だけ厳しさが緩和されますが、気温の上下によって雪面状態が激しく変化するという面もあります。
YUKIYAMA
無雪期では、体力・知識技術・判断力のうち、体力の要素が一番大きいのに対し、積雪期では、体力はもちろん、知識技術・判断力の全てが要求されるのです。
積雪期に要求される主な知識技術です。
1. ピッケルとアイゼンで、堅い雪面でも転ばず登下降する
2. 滑落や雪崩をさけて安全な登下降ルートを選択する
3. 地図・コンパス・GPSなどを使って、迷わず目的のルートを歩く
4. 悪天候を予測し遭遇しないような行動をとる
5. 低温下でも凍傷などにならず体調を維持する
 知識は机上で身につけることが出来ますが、技術は山に行って練習しないと身につきません。判断力は失敗を含む多様な登山経験を通してしか身につけることができません。これを見落として雪の山に行くと痛い目に遭いますよ。
技術や経験を効率的に積むにはどうするか。次回はこのテーマを。
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Updated: 2017年2月21日 — 7:46 PM

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